同時履行の抗弁権（債務不履行解除）

契約をした相手方が定められた期日に代金を支払わない、土地を引渡さないといった場合に、相手方の債務不履行（履行遅滞）を理由として契約解除をするためには以下の要件や手順が必要となります。

『催告』が必要（『履行遅滞』を理由とする契約解除の要件）

履行期を過ぎても履行がなされない場合、相当の期間を定めて『履行を催促』し、それでも履行をしない場合にはじめて契約解除することができます。
催告期間について明確な定義はありませんが、不動産の売買契約であれば一週間程度の催告期間を設けるのが一般的です。

『同時履行の抗弁権』に注意

売買契約のように契約当事者の双方が互いになすべきことを有する契約（双務契約）において、双方の債務の履行期が同時とされている場合が多く、その場合には当事者の一方は、相手方がその債務の履行をしようとしないならば、自分も債務の履行を拒むことができます。これが「同時履行の抗弁権」と呼ばれるものです。

たとえば、残代金支払日が平成２８年３月５日とされている場合、３月５日に残代金を支払わなければ買主様は、直ちに「履行遅滞」の状態になるわけではありません。３月６日に売主様が何もしないのであれば、買主様も同時履行の抗弁権により３月６日に代金を支払わないことが正当化されてしまいます。つまり「履行遅滞」になりません。

履行遅滞により契約を解除するためには、まずは相手方の同時履行の抗弁権をなくす必要があり、そのために、まず自分の債務の「履行の提供」をする必要があります。

同時履行の抗弁権を有する相手に対する解除の流れ

買主様が代金を支払わないので、売主様が解除しようとする場合

Step.1　相手方の同時履行の抗弁権を失わせる

履行場所と時間がすでに決まっているのであれば、履行の用意をしたうえで、決められた日時場所に向かっていただきます。しかし、多くの場合、契約書には「残代金　平成２８年〇月✕日まで」と記載しているだけで、履行場所や時間は決済日直前になるまで決まっていないことが多いので、まずは履行の提供をするための日時や場所を相手方に連絡する必要があります。

Step.2　相当の期間を定めて催告および停止条件付解除をする

履行の用意をしたうえで売主が所定の履行日に履行場所に行けば、売主様は履行の提供をしたわけですから、買主様の同時履行の抗弁権はなくなり、買主は履行遅滞の状態になります。しかし、履行遅滞による解除の場合は、さらに「催告」が必要なので、売主様が解除しようとする場合は、次に催告をする必要があります。相当期間を定めて催告したのに履行がなかったら解除が可能になります。

売主様が登記等の義務を履行しないので、買主様から解除しようとする場合

Step.1　相手方の同時履行の抗弁権を失わせる

履行場所と時間がすでに決まっているのであれば、履行の用意をしたうえで、決められた日時場所に向かっていただきます。しかし、多くの場合、契約書には「残代金　平成２８年〇月✕日まで」と記載しているだけで、履行場所や時間は決済日直前になるまで決まっていないことが多いので、まずは履行の提供をするための日時や場所を相手方に連絡する必要があります。

Step.2　相当の期間を定めて催告および停止条件付解除をする