売買契約と条件(停止条件・解除条件)

停止条件・解除条件付不動産売買契約
 

  • 停止条件・・・契約当事者があらかじめ定めた条件が成就すれば、契約は条件が成就した時から効力を生じる。
  • 解除条件・・・契約当事者があらかじめ定めた条件が成就すれば、契約は条件が成就した時に効力を失う。

借地権付きの建物の売買契約をしようとする場合などに停止条件を活用することがあります。借地権付の建物の売買をすることは借地権を譲渡するということを伴い土地所有者(賃貸人)の承諾が必要ですから、承諾を得る前には売買はできませんが、承諾を得られることを停止条件としての売買契約は可能となります。解除条件ではなく停止条件とする理由は、承諾前に契約の効力を発生させてしまうと契約違反になってしまうからです。承諾が得られることを停止条件とすれば、その条件が成就する(承諾が得られる)までの間は、ばいばいのこうりょくはまだ生じていないので、賃貸人に無断で譲渡したという扱いにはならない訳です。

契約の効力は契約締結と同時に生じさせ、一定の事情が生じたときにだけ契約の効力を失わせたいというような場合は、解除条件を使います。融資承認が得られない場合に、それを条件として契約が当然に解除されるとするようなローン特約は、この例です。

気を付けておきたいのは、停止条件にしても解除条件にしても条件をつける場合には、定めた条件が成就するのかしないのかを確定させるための日を定めておくべきだということです。条件付の契約は、条件が成就するかどうかが未定の間、契約の効力がどうなるか未確定ですが、その間も相手方は条件成就によって利益を受ける事についての期待権を持っており、一方的にその期待権を侵害できません。

条件の成否未定の間も、当事者は双方ともその契約に拘束されるわけです。例えば、土地の貸主の承諾を停止条件として借地権付建物の売買契約をした場合を例にとると、貸主が承諾するともしないとも明確な返答をしない状態が続くと、条件が成就していない状態がずっと継続している事になります。もしかすると、それが3年も5年も続くことになるかもしれません。条件成就、不成就を確定させる日を決めておかないと、売主様も買主様も停止条件付きの契約に拘束された状態がいつまでも続いてしまします。それでは互いに困るので、あらかじめ定めておいた期限までに承諾が得られなければ、条件が成就しなかった扱いにして、契約の効力が生じないことを確定できるようにしておくことが望ましいわけです。

停止条件の場合は、条件が成就しないことが確定すれば、契約の効力が生じないことが確定し、解除条件の場合は条件が成就しないことが確定すれば、契約解除の効力は生じないことが確定します。

停止条件を活用した契約の例

不動産の売買契約にあたり、停止条件を活用する例を以下にあげます。

【裁判所の許可を停止条件とする条項】

成年後見人が、成年被後見人を代理して、居住用不動産を処分(売却・賃貸・抵当権の設定)するには家庭裁判所の許可が必要です。したがって、わたしたち宅建業者が青年被後見人の居住用不動産の売却の媒介をする場合において、青年後見人に売却の意思があってもまだ許可を得ていない段階で契約書を作成する際には、以下の条項例のように特約をいれるようにします。ただし、家庭裁判所によっては許可前の停止条件付契約そのものを許さないという実務もあるようですから、契約前に家庭裁判所の後見センターに確認をとるようにしています。

  • 売主〇〇氏は成年被後見人であり、平成29年3月5日に☐☐氏が東京家庭裁判所において成年後見人に選任されているが、本件売買物件は売主〇〇氏の居住のための物件であり、その売却には家庭裁判所の許可が必要であるので、本売買契約は上記許可決定を停止条件として効力を生ずるものとする。
  • 平成29年4月30日までに前項の家庭裁判所の許可を取得できない場合には、本売買契約は当然に白紙解除されるものとし、売主は受領済みの手付金を直ちに買主に変換するものとし、その場合、買主は売主に対し何らかの金銭的請求、法的請求をなし得ないものとする。

【借地権付き建物の売買(地主承諾が未了の場合)】

借地権譲渡には賃貸人(地主)の承諾が必要であり、承諾を得ないで売買をしてしまうと無断譲渡となり借地契約を解除される可能性がありますので、借地権付建物の売買は、地主の承諾を得てから行うことが安全です。承諾未了の場合や、借地非訟手続を予定している状態で売買契約をする場合は、承諾や承諾に替わる裁判所の許可を得られることを停止条件にしたうえで行うことができます。あらかじめ定められた日までに承諾が得られず、また、裁判所からの許可も下りなければ、条件不成就により契約の効力が生じないことが確定して終了します。

  • 本件売買は借地権付き建物の売買契約であり、借地権譲渡には地主(土地所有者)の承諾が必要であるところ、本件においてはまだ地主である〇〇氏からの承諾は得られていない。
    そこで本件売買契約は、平成30年3月5日までに、地主である〇〇氏から借地権譲渡を承諾する内容の書面、あるいはそれに替わる裁判所の許可を得る事を停止条件として効力を生じるものとし、売主は、本件契約後速やかに必要な手続きをしなければならない。なお、地主に対する承諾料は売主において負担するものとする。

売買契約締結までの流れ


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